未経験から税理士法人への転職を目指す方が、近年増加しています。
「試験勉強と両立しながら働きたい」といった理由から、未経験でチャレンジしたいと考える方は少なくありません。未経験者歓迎の求人は存在しますが、その実情や求められるスキルについて知っておくことが大切です。

この記事では、未経験から税理士法人へ転職するための現状や求められるスキル、求人の探し方、応募・面接のポイント、転職後に後悔しないための注意点について詳しく解説します。

未経験から税理士法人へ転職できるのか？現状と課題

未経験から税理士法人への転職は、ハードルが高いイメージを持たれがちですが、実際には「税理士補助」といったポジションを中心に未経験者でも採用される事例が増えています。特に中小規模の事務所では、資格取得を目指しながら実務経験を積みたい志望者を受け入れる文化が根強く存在します。一方で、求人数は限られており、年齢やスキルによっては厳しい競争にさらされることも少なくありません。

税理士法人で未経験者が採用される背景

税理士法人では、繁忙期における業務量の増加や人手不足といった課題から、ポテンシャル採用として未経験者を受け入れるケースがあります。特に20代の若手は、将来的に税理士資格を取得して長く活躍してくれる人材として期待されるため、採用の門戸が広いと言えるでしょう。また、補助業務を中心としたポジションであれば、実務経験がなくとも指導を受けながら仕事を覚えていける体制が整っている場合もあります。

未経験者を歓迎する求人が存在する理由

未経験歓迎の求人が存在する理由の一つには、「人材育成の前提で採用する」という方針があります。とくに小規模な税理士法人や、所長自らが教育に熱心な事務所では、未経験者を一から育てることを重要視しています。これに加えて、税理士試験の勉強を並行して進めたい人材に対して、勤務時間や業務内容に配慮してくれるケースも多いです。さらに、現在は税理士業界全体として若手不足が続いており、多少の未経験でも積極的に採用する傾向が見られます。

実際に未経験で転職を成功させた事例

未経験で税理士法人に転職を果たした事例として、30代の経理経験者が税理士補助として採用されたケースがあります。この方は、事業会社での経理経験と簿記2級の資格を武器に、未経験ながらも「すぐに基本的な業務が任せられる人材」として評価されました。さらに税理士試験の科目合格を目指している熱意も加わり、採用側から「将来的な戦力」と見込まれたのです。このように、未経験であっても「学ぶ姿勢」「関連スキル」「将来性」を示せれば、道は開けると言えます。

未経験で税理士法人に転職するために必要なスキル・資格

未経験であっても税理士法人への転職を成功させるには、一定のスキルや資格を有していることが望まれます。とくに基本的な会計知識や数字への強さ、学習意欲は大前提となります。これらのスキルは、日商簿記2級の取得によって客観的に証明できるため、まず目指すべき資格として推奨されます。

簿記や会計の基礎知識はどこまで必要か

税理士法人の業務は、領収書の仕訳から決算書の作成、税務申告書の作成補助など多岐にわたります。そのため、仕訳のルールや勘定科目、帳簿の読み方といった基礎知識は最低限必要です。日商簿記3級ではカバーしきれない範囲が多いため、2級以上の取得を目指しておくと実務にスムーズに対応できるでしょう。実務未経験であっても、資格取得を通じて「理論的な理解がある」という証明ができれば、採用側からの評価は高まります。

税理士試験の進捗状況が評価にどう影響するか

税理士法人によっては、税理士試験の科目合格数が選考の重要なポイントとなる場合があります。未経験であっても、簿記論・財務諸表論の2科目合格を果たしていれば「実務を学びながら資格取得を目指す人材」として高評価されます。反対に、資格試験に未着手の状態だと「本気度」に疑問を持たれる可能性もあるため、転職活動を始める前に少なくとも1科目以上の合格を得ておくことが望ましいでしょう。

コミュニケーション能力や人柄が評価されるケース

税理士補助としての業務は、数字を扱う作業だけでなく、クライアントとのコミュニケーションやチーム内での連携が欠かせません。とくに中小規模の税理士法人では、所長や同僚と密に情報共有しながら仕事を進める必要があります。このため、事務処理能力だけでなく、相手の意図を汲み取る力や誠実さ、明るい対応が求められます。採用面接では「人柄を重視する」というケースも少なくなく、前職での接客経験や営業経験など、対人スキルの実績を積極的にアピールすると有利です。

未経験から税理士法人に転職する際の注意点と成功のコツ

未経験から税理士法人に転職する際には、単に「未経験歓迎」の求人を探すだけではなく、いくつかの重要なポイントを意識する必要があります。職場によって教育体制や求める人物像が大きく異なるため、転職活動の戦略を誤ると、入社後にミスマッチを感じてしまうリスクもあります。ここでは、未経験転職を成功させるための実践的なコツや注意点を解説します。

求人情報の「未経験可」をうのみにしない

「未経験歓迎」「未経験可」と記載のある求人であっても、実際には一定レベルの知識やスキルを求められるケースがあります。とくに税理士法人では、繁忙期に即戦力が求められることが多く、採用後に基本的な経理知識が不足していると苦労することになるでしょう。そのため、求人内容を鵜呑みにせず、面接で具体的な仕事内容や教育体制について詳しく確認することが大切です。

志望動機とキャリアビジョンを具体的に伝える

未経験から税理士法人を目指す場合、「なぜこの業界に転職したいのか」「今後どのようなキャリアを築きたいのか」といった動機の明確化が不可欠です。採用側は、未経験者を教育する労力やコストを負担する以上、長期的に活躍してくれる人材を求めています。面接では「税理士試験に何年以内に合格したい」「将来的にどの分野の税務を専門にしたい」といった具体的なビジョンを話せると好印象につながります。

求人媒体だけでなくエージェントも活用する

未経験歓迎の求人は公開されている件数が少なく、特に良い条件の求人は非公開の場合もあります。税理士業界に特化した転職エージェントを活用することで、自力では見つけにくい求人や、未経験者を前提に教育体制が整った事務所の情報にアクセスできます。エージェントは書類作成や面接対策もサポートしてくれるため、未経験からの転職には心強い味方となるでしょう。

30代・40代で未経験から税理士補助を目指す場合の戦略

未経験からの税理士法人転職は、20代に比べて30代・40代では難易度が上がります。ただし、関連性の高い経験やスキルを持つ場合、年齢をハンデとせず強みに変えることが可能です。年齢を問わず転職を成功させるためには、自己分析と戦略的なアピールが不可欠です。

30代で未経験転職を成功させるポイント

30代の場合、採用側からは「なぜ今から税理士法人を目指すのか」「長期的に働いてくれるのか」といった視点で見られます。そのため、面接では「自分の中での明確な転職理由」「税理士資格取得に向けた計画」「将来的なビジョン」を具体的に語ることが重要です。また、一般企業での経理経験やマネジメント経験があれば、それらを転職先でどのように活かせるかを整理し、強みとしてアピールしましょう。

40代で未経験転職を成功させるポイント

40代の場合、まったくの未経験では採用のハードルが高いものの、経理や会計に関連する実務経験を持っていればチャンスがあります。応募先には、自身の経験が税理士補助業務に直結することをしっかり伝える必要があります。また、所長や上司との年齢差が少ない職場や、同年代の職員が活躍している事務所を選ぶことで、組織に馴染みやすくなるでしょう。採用側も「即戦力としての期待」「年齢に応じた責任感や安定性」を評価する傾向にあります。

未経験でBig4税理士法人に挑戦する可能性と対策

税理士法人の中でも「Big4」と呼ばれる大手4法人は、ハイレベルな実務と教育制度を兼ね備え、キャリアアップや年収向上を目指す人材にとって憧れの転職先です。しかし未経験からの挑戦となると、求められる要件や競争率は非常に高いと言わざるを得ません。

Big4の採用基準と求められるスキル

未経験者の場合でも、税理士試験に科目合格していることが評価対象になります。簿記論・財務諸表論の合格は最低ラインであり、さらに英語力（TOEIC700点以上）があれば国際税務分野での採用可能性が広がります。加えて、外資系企業やグローバルビジネスに関わった経験、海外取引の会計処理経験などがあると、書類選考での印象が大きく変わります。

Big4に挑戦するために今できる準備

Big4を目指すなら、まずは資格取得を優先的に進めると同時に、日常的に英語力を強化する取り組みが必要です。また、外資系クライアントとのやり取りを想定し、英語でのビジネスメール作成や会話のトレーニングも効果的です。未経験からの挑戦であっても、こうしたスキル習得の努力を選考過程でアピールすることで、採用担当者からの評価を高めることができます。

税理士法人選びのポイントと転職後のキャリア形成

未経験で転職を果たした後、どのような環境で働くかが将来のキャリアに大きな影響を与えます。税理士法人選びの際には、単に「未経験可」や「教育体制」の有無だけでなく、自身のキャリアビジョンに合致しているかを重視すべきです。

所長の人柄や方針は重要な判断材料

税理士法人の規模に関わらず、所長の方針やリーダーシップが職場の雰囲気や働き方に大きな影響を与えます。未経験者を育成する意思が強い所長であれば、質問や相談がしやすく、成長につながる職場環境が整っています。逆に、即戦力を重視する所長のもとでは、未経験者に厳しい環境となる可能性があるため、面接や見学時に職場の空気感を確認することが重要です。

自分の成長に合った業務内容を選ぶ

税理士法人には、法人税務・資産税・国際税務・相続税など専門性が分かれるケースが多くあります。幅広く実務を経験できる小規模事務所に入るか、特定分野に特化した大規模法人に入るかは、キャリアプラン次第です。将来どの分野で強みを持ちたいか、資格取得にどのような影響があるかを事前に考えた上で選択すると、転職後のキャリア形成がスムーズに進むでしょう。