経理の実務に5年ほど携わり、海外子会社とのやり取りや英文の資料に触れる機会が増えてきた。この流れを転職の武器にしたいと考え、「英文会計の資格といえばBATIC」という記憶を頼りに検索した。そんな場面は珍しくありません。
ただ、最初にお伝えしなければならないことがあります。BATIC(国際会計検定)は、主催していた東京商工会議所の公式ページで、2022年度の第44回試験をもって終了したと案内されています。いまから申し込んで受験することはできません。古い体験記や対策記事は今も検索に出てきますが、現在の受験を前提にした情報ではないことに注意が必要です。
英文会計のスキルが活きやすいのは、連結決算、海外子会社の管理、外資系企業の経理、IFRSやUS GAAPへの対応、国際税務の補助といった業務です。求人を探すときは、資格名よりも、こうした業務が求人票にどう書かれているかを見るのが近道になります。
終了した資格であっても、英文会計というテーマが行き止まりになるわけではありません。すでにBATICの認定を持っている人は、その経験を職務経歴書でどう見せるかを考えられます。これから英文会計を伸ばしたい人は、資格・語学・実務のどれで示すかを選べます。この記事では、終了という事実を公式情報で確認したうえで、求人の見分け方、持っている人の見せ方、これからの学び方の比較、年収の見方の順に整理します。
この記事で分かること
- BATICが終了した事実と、公式ページで確認できる範囲
- 英文会計が活きやすい求人の見分け方と、職場の種類ごとの違い
- すでに認定を持つ人が、職務経歴書と面接で使う書き方
- これから英文会計を伸ばす人の選択肢と、比較の軸
- 年収を考えるときに、公的統計で言えること・言えないこと
BATICは2022年度で終了している|受験を前提にした計画は立てられない
BATIC(国際会計検定)は、2022年度の第44回試験をもって終了しました。これから取得して転職に使う、という計画は成り立たないため、まず事実関係を押さえます。
公式ページで確認できること
東京商工会議所の検定ページには、BATICは2022年度の第44回試験をもって終了した、と明記されています。同じ公式ページには、2001年から2022年まで同所が主催し、累計91万人が受験したことも載っています。英語力と国際会計スキルを同時に測る試験として位置づけられていた、という説明も確認できます。
また、公式テキストと公式問題集は現在も購入できると案内されています。検定は終了しましたが、教材は残っているということです。
古い情報を見分ける目安
検索結果には、受験体験記、合格率の解説、勉強時間の目安といった記事が多く残っています。これらは終了前に書かれたものが中心です。記事の公開日が2022年以前であれば、現在の受験計画には使えません。
とくに注意したいのは、スコアの区分、更新の要否、合格の水準といった細かい話です。公式ページから確認できなかった項目は、この記事では扱いません。終了した試験の細部は、民間の解説や個人の記録に頼ることになり、正確さを確かめにくいためです。
終了した資格をどう受け止めるか
終了したから価値がない、と決めつける必要はありません。一方で、取得できない以上、これから応募書類に新しく加えられる資格でもありません。
採用側が見ているのは、資格名そのものより、その人が英文の会計資料を扱えるか、英語で経理の用語を使って説明できるかといった実務の中身です。資格が終了したいま、この中身をどう示すかが、転職での勝負どころになります。次の章では、その中身が使われる求人をどう見分けるかを整理します。
英文会計が活きやすい求人は、求人票の「業務の中身」で見分ける
求人に「英語歓迎」と書かれていても、実際に英文会計を使う仕事とは限りません。求人票の業務内容と配属先の記載から、使う場面を具体的に読み取ることが大切です。
英文会計の知識が使われる根拠
連結・開示の現場で国際的な会計基準が使われていることは、東京証券取引所の公表資料から確認できます。東京証券取引所は2025年8月8日、2025年6月末時点の東証上場内国会社3,803社を対象にした分析を公表しました。この分析によると、IFRS(国際会計基準)を適用済みの会社は287社、適用を決定した会社が8社、適用予定の会社が5社で、合わせて300社です。
この数字は上場会社に限った集計で、すべての企業の状況を表すものではありません。また、IFRSを使う会社の経理に必ず英語の業務があるとも言えません。ただ、基準書や関連資料が英語で整備されている以上、連結や開示を担う部署では英文の会計情報を読む場面が生まれやすい、と考えるのは自然です。
職場の種類ごとの傾向
職場の種類によって、英文会計を使う業務や求められる英語の使い方は異なります。次の表は、区分呼称ごとの傾向を整理したものです。個別の企業名は入れておらず、実際の配属先では業務の中身を確認する必要があります。
| 職場の種類 | 英文会計を使う業務 | 求人票での記載例 | 求められやすい英語の使い方 |
|---|---|---|---|
| 海外子会社を持つ事業会社 | 連結決算、海外子会社の月次報告の取りまとめ、グループ会社への会計方針の周知 | 「連結決算業務」「海外子会社管理」「グループ経理」 | 読む(報告書・メール)、書く(問い合わせ・指示)が中心。会議は担当による |
| 外資系企業 | 本社への英語での報告、現地基準と本社基準の調整、監査対応 | 「英語でのレポーティング」「本社とのやり取り」「英語ビジネスレベル」 | 読む・書く・話すの三つとも求められやすい |
| 国際ネットワークを持つ会計・監査ファーム等 | 海外関連会社を持つ依頼先の会計処理、国際税務の補助、英文資料の確認 | 「外資系クライアント担当」「国際税務」「英文での資料作成」 | 英文資料を読む・書くが中心。担当案件で話す機会が増える |
表の内容は一般的な傾向であり、同じ区分でも部署や案件で実態は変わります。「この業界だから英語が使える」と決めつけず、配属先の業務で判断するのが確実です。
求人票で確認する項目
次のような項目に注目すると、英語を使う実態を見分けやすくなります。
- 連結決算、海外子会社の管理、グループ会社の報告業務といった記載があるか
- 英語を使う相手(海外の拠点、外国籍の上司、海外の監査人など)が書かれているか
- 英語を使う頻度や場面(月次の報告、メール、会議など)が具体的か
- 募集背景に、海外展開や外国資本との関係が触れられているか
- 英語力の要件が「必須」なのか「歓迎」なのか
「英語歓迎」だけで業務内容に海外関連の記載がない求人は、英語の使用頻度が低い可能性があります。反対に、募集背景に海外拠点の増加が書かれていれば、英文会計の出番が多い仕事と考えられます。
面接で確かめたいこと
求人票だけでは分からない部分は、面接や面談で確認します。たとえば、英語で作成する資料にはどんな種類があるか、英語でのやり取りの割合はおおよそどのくらいか、海外拠点の担当者とはどの言語で話すのか、といった質問が有効です。
質問は、入社後にどんな仕事をするかを具体的に思い浮かべたい、という姿勢で伝えると、受け取られ方も柔らかくなります。面接全体の準備については経理の転職面接で聞かれる質問と答え方も参考にしてください。
すでにBATICを持っている人は「資格名」より「何ができるか」を書く
認定を持っているなら、資格欄に書いたうえで、職務経歴書の中で実務とつなげて見せるのが基本です。資格名だけを並べるより、使った場面と成果を添えるほうが伝わります。
職務経歴書への書き方
資格欄には取得した資格名と取得年を書きます。終了した検定であることは、応募先がすでに知っているとは限りません。ただ、書類上で「現在は受験できない」と説明を加える必要はなく、資格名と年だけで十分です。
大切なのは、職務内容の欄です。たとえば、海外子会社から届く月次の報告を英語のまま読み取り、日本基準の数字に組み替えて連結に取り込んだ経験があるなら、その流れを具体的に書きます。英文の取引先とのメールで会計用語を使い分けた経験や、英語の監査対応の補助をした経験も、同じように具体化できます。書き方全般は経理の職務経歴書の書き方の記事でも整理しています。
面接で聞かれやすい点と答え方の軸
面接では、資格の内容を問われるよりも、実際の仕事での使い方を聞かれる場面が想定されます。たとえば、「英語の資料を扱うとき、どこで手が止まりやすいか」「海外子会社の数字に違和感があったとき、どう確認したか」といった質問です。
答えるときは、状況、自分の役割、取った行動、結果の順で話すと伝わりやすくなります。資格の話は冒頭で一言触れるだけにして、中心は実務の説明に置きます。
書類を出す前のチェックリスト
次の項目を、提出前に自分で確かめてみてください。
- 資格名と取得年が正しく書かれているか
- 英文会計に触れた業務を、場面・頻度・扱った資料の種類で説明できているか
- 「英語が得意」と書くだけで終わらず、会計の用語を英語でどう使ったかまで書けているか
- 数字の成果(処理件数、短縮した日数など)を書く場合、自分の業務記録で裏づけられるか
- 応募先の業務に近い経験を、一番上に置けているか
最後の項目は見落としがちです。経験が複数あるときは、応募先が求める業務に近いものを先頭に出します。
これから英文会計を伸ばすなら、資格・語学・実務の三つの軸で選ぶ
BATICの代わりになる単一の資格を探すより、何を示したいかを先に決めると選びやすくなります。示し方は、資格、語学の客観的な指標、実務経験の三つに大きく分けられます。
選択肢の比較表
次の表は、代表的な選択肢を、示せること・向く人・注意点で整理したものです。試験内容や難易度、受験要件の数値は、それぞれの主催団体の公式ページで最新の内容を確認してください。公式ページは、日商簿記(日本商工会議所)、USCPA(AICPA & CIMA)、TOEIC(IIBC)です。この記事の表には、確認できていない数値は入れていません。
| 選択肢 | 示せること | 向く人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 日商簿記などの国内の簿記資格 | 会計の基礎と、日本基準での処理力 | 英文会計の前に、土台を固めたい人 | 英語力そのものは示せない |
| 米国公認会計士(USCPA)など英語で受ける資格 | 英語での会計知識と、国際的な業務への意欲 | 外資系や国際業務の経理・監査を目指す人 | 受験要件や学習の負担を、公式情報で事前に確認する必要がある |
| 英語力の客観的な指標(TOEICなど) | 英語での読み書き・聞き取りの水準 | 会計の知識は十分で、語学の裏づけが欲しい人 | 会計の中身までは示せない |
| 実務経験(海外子会社の連結、英文資料の作成など) | 現場での英文会計の運用力 | 現職で英語に触れる機会を増やせる人 | 異動や担当替えの機会に左右される |
| 終了した検定の公式テキストでの独学 | 英文会計の用語と処理の基礎知識 | 資格は取れなくても、知識だけ補いたい人 | 認定は得られず、応募書類では経験として説明することになる |
どの軸から手を付けるか
おすすめしやすい順序は、現職の経験の棚卸し、次に語学や会計の補強、最後に資格という流れです。現職で英文の資料に触れているなら、その経験が最も説得力のある材料になります。
触れていない場合は、社内で海外関連の業務に手を挙げられないかを探すのが近道です。転職してから英語を使う仕事を始めるより、現職で小さくても経験を作ってから動いたほうが、書類に具体的な内容を書けます。
USCPAを視野に入れる場合
米国公認会計士を視野に入れるなら、受験資格は受験する州ごとに異なるため、公式の案内で確認する必要があります。大手のファームへの道筋はUSCPAからBig4系ファームへ転職するにはで別に整理しています。この記事では、英文会計の入り口としてどの程度のものを目指すかの判断に絞ります。
年収は「英文会計の有無」ではなく、公的統計の範囲と求人の根拠で見る
英文会計のスキルが年収にどう反映されるかは、公的統計では区分されていません。ここでは、確認できた数値と、そこから言えることの限界を分けて整理します。
公的統計で確認できる数値
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、一般労働者の賃金(令和7年6月分の所定内給与額)が、男女計で340.6千円、男性で373.4千円、女性で285.9千円と公表されています。これは全職種を対象にした集計です。
会計事務に近い職種の値は、今回確認できた公表資料の範囲では取れませんでした。英語力や英文会計の資格の有無で区分した賃金も見つかっていません。したがって、「英文会計ができると年収がいくら上がる」と数字で示すことは、この記事ではしません。
個別の年収の見方
公的統計が細かい区分を持たない以上、判断は求人票や選考の中で確かめることになります。確認したいのは、想定年収の幅がどの経験や役割を前提にしているか、英語を使う業務が給与の条件に含まれているか、職位や役割が何に当たるか、といった点です。
人材紹介会社の集計や求人サイトの平均値は、サンプルの偏りがあるため、この記事では使いません。数字を見るときは、調査主体と対象の範囲を必ず確かめてください。
英文会計を年収交渉に使うときの考え方
年収の話では、「英語ができる」より「英語を使って何を任せられるか」を伝えるほうが説得力を持ちます。連結決算の期間を短くできる、海外拠点との調整を一人で回せる、といった役割の話として整理します。
「必ず年収が上がる」と断言できるものはありません。経験の中身と応募先が求める役割が合ったときに、評価につながる可能性がある、という程度に受け止めておくのが現実的です。
まとめ
BATICは2022年度の第44回試験をもって終了しており、これから受験して転職に使うことはできません。ただ、英文会計を扱える人が評価される可能性そのものがなくなったわけではなく、示し方を変えれば活かせます。東京証券取引所の公表では、2025年6月末時点で上場会社のうち300社がIFRSを適用済み・適用決定・適用予定であり、連結や開示の現場で国際的な会計基準に触れる機会は現実にあります。
すでに認定を持つ人は、資格名と取得年を書いたうえで、職務経歴書の中心を実務の具体的な説明に置きます。これから伸ばす人は、資格・語学・実務のどれで示すかを先に決め、現職の経験の棚卸しから始めるのが近道です。求人を見るときは、「英語歓迎」の文言より、業務内容と配属先の記載で、実際に英文会計を使うかを判断します。
年収については、公的統計には英語力や資格の有無で区分した値が見当たらないため、数字で約束できる話ではありません。求人票の根拠と面接での確認を重ねて、納得のいく条件を探してください。
- BATIC(国際会計検定)は2022年度の第44回試験をもって終了している
- 英文会計が活きる求人は、「英語歓迎」ではなく業務内容と配属先の記載で見分ける
- 認定を持つ人は、資格名より実務での使い方を職務経歴書に具体的に書く
- これから伸ばす人は、資格・語学・実務のどれで示すかを先に決める
- 年収は公的統計で英文会計の区分がないため、求人票の根拠と面接で確かめる

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