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会計事務所・税理士法人の志望動機の書き方|選考で見られる点と組み立て手順

Photo by Juls P on Unsplash

「なぜ会計事務所なのか」と「なぜこの事務所なのか」。この2つを聞かれる場面を前に、手が止まっていませんか。経理の経験や簿記・税理士試験の科目合格はあるのに、それを志望動機の文章にしようとすると「専門性を高めたい」「成長できる環境で働きたい」といった、どの事務所にも当てはまる言葉しか出てこない。そんな状態の方は少なくありません。

志望動機は、うまい文章を書く課題ではありません。採用側が知りたいのは、あなたがこの仕事の中身を理解しているか、入ったあとに続けられそうか、事務所の顧客や体制と噛み合うか、の3点です。この3点に答える材料を、自分の経験の中から並べ直せば、文面は自然にできあがります。

会計事務所や税理士法人は、事業会社の経理とは仕事の向きが違います。事業会社では自社の数字を扱いますが、会計事務所では複数の顧問先の数字を預かり、期限のある申告や決算に向けて動きます。この違いを自分の言葉で説明できるかどうかが、志望動機の説得力を大きく左右します。

この記事では、志望動機の土台になる考え方から、4段階の組み立て手順、経歴別に何を軸にするか、例文、避けたい表現と提出前のチェックリストまでを順に整理します。

この記事で分かること

  • 会計事務所・税理士法人の選考で、志望動機のどこが見られているか
  • 志望動機を「理由・経験・事務所との接点・入社後」の4段階で組み立てる手順
  • 未経験・実務経験者・科目合格者・事業会社経理からの転職で、軸にすべき材料の違い
  • 書類と面接で話がぶれないようにする、提出前のチェックリスト
目次

志望動機で採用側が見ているのは「仕事の理解」と「続けられるか」

会計事務所の志望動機で最初に問われるのは、熱意の大きさではなく、仕事の理解の深さです。税理士業務の中身を踏まえたうえで、なぜその道を選ぶのかを説明できている人は、短い文章でも伝わります。

税理士業務の中身を踏まえているか

国税庁は、税理士業務を税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つとして説明しています。また税理士の使命について、税務の専門家として独立した公正な立場に立ち、納税者の信頼を得て、租税に関する法令に定められた義務の適正な実現を図ることだと説明しています(国税庁「税理士制度のQ&A」)。

この説明は、志望動機に使える手がかりになります。「数字が好き」「資格を活かしたい」という理由だけでは、事業会社の経理でも成り立ちます。一方、「申告という期限のある手続きを、顧問先ごとの事情に合わせて整える仕事に携わりたい」と書けば、会計事務所の仕事の特徴を踏まえた動機になります。

採用側は、応募者が「税理士の補助」というイメージだけで来ていないかを見ています。月次の記帳チェック、決算・申告の準備、顧問先との連絡など、日々の業務のどこに自分が関わるのかを具体的に想像できているかが、仕事の理解として伝わります。

繁忙期を越えて続けられるか

次に見られるのは、続けられるかどうかです。会計事務所には申告期に業務が集中する時期があり、その負荷を知らずに入ると早期離職につながりやすい、と採用側は考えています。繁忙期の働き方は事務所ごとに差があるため、実態の確認方法は会計事務所の残業と繁忙期の実態で整理しています。

志望動機の中でこれに触れるときは、「忙しさも承知している」と宣言するだけでは弱くなります。前職でも決算期や月末月初に業務が集中した経験があり、その時期にどう優先順位をつけて乗り切ったか、という事実を一文添えるほうが説得力があります。

顧問先や体制との接点があるか

三つ目は、事務所との接点です。法人税中心の事務所、個人の資産税に強い事務所、医療・不動産・飲食など特定業種の顧問先が多い事務所、記帳代行から経営支援まで広く扱う事務所など、会計事務所の特徴は一様ではありません。

日本税理士会連合会の公表では、税理士登録者は令和8年9月末日現在で82,682名です(日本税理士会連合会「税理士登録者数」)。多くの事務所があるなかで、「この事務所を選んだ理由」が書けているかどうかが、他の応募者との差になります。応募先の特徴は、求人票だけでなく事務所のサイトの事業内容、所属税理士の発信、顧問先の業種の傾向から拾えます。求人票の読み方は会計事務所の求人 見分け方でも確認できます。

志望動機は4段階で組み立てる

志望動機は、「理由→経験→事務所との接点→入社後」の4段階に分けて書くと、短くても筋が通ります。先に材料をそれぞれ書き出し、最後に文章へまとめる順番にすると迷いません。

段階1:会計事務所を選ぶ理由を1つに絞る

最初に、事業会社の経理ではなく会計事務所を選ぶ理由を1つだけ決めます。理由を3つも4つも並べると、どれも浅く見えます。

材料になるのは、たとえば次のような経験です。

  • 事業会社で決算・申告の一部だけを担当し、全体を通して関わりたいと感じた
  • 経営者と直接話す機会が少なく、数字の先にいる人の相談に乗る仕事がしたいと感じた
  • 税理士試験の勉強で学んだ税法を、実務で使う仕事に就きたい

ここで大切なのは、「きっかけとなった具体的な場面」を1つ入れることです。場面があると、理由が借り物の言葉ではなく自分の経験として読めます。

段階2:理由を裏づける経験・学習を示す

次に、その理由を裏づける経験を挙げます。実務経験者なら担当した業務の範囲と件数感、未経験者なら学習の内容と継続期間が材料です。

ここでは、数字は自分で確かめられる事実だけを書きます。「簿記2級を取得」「税理士試験の簿記論に合格」「月次決算を毎月担当」のように、事実として言い切れるものを使います。見栄えのために盛った表現は、面接で掘り下げられたときに崩れます。

資格の取得年や科目名は、書類の他の欄(学歴・職歴・資格欄)と必ず一致させます。志望動機の欄だけ違う記載になっていると、書類全体の信頼が下がります。

段階3:その事務所でなければならない接点を書く

三つ目が、事務所との接点です。ここが最も差のつく部分です。次のような視点で応募先を調べ、自分の経験や関心と重なる点を1つ選びます。

  • 顧問先の業種や規模の傾向(自分の前職の業界と重なるか)
  • 扱う業務の幅(記帳・申告中心か、相談・コンサルティングも含むか)
  • 研修や育成の仕組み(未経験者を受け入れる体制があるか)
  • 所属税理士の考え方や発信している内容

接点は「御所の理念に共感しました」だけでは足りません。理念のどの部分に、自分のどの経験が結びつくのかまで書いて、初めて接点として機能します。

段階4:入社後にどう貢献し、どう成長するかを書く

最後は、入社後の姿です。ここでは「成長したい」ではなく、まず担当したい業務と、その業務で出せる価値を書きます。

たとえば、前職で月次の締め処理を整えた経験がある人なら、「顧問先の月次資料の回収と確認を早める仕組みづくりで貢献したい」と書けます。そのうえで、数年後に目指す姿(税理士試験の科目合格を進める、特定業種に詳しくなる、など)を添えると、長く働く意思も伝わります。

経歴別に、軸にする材料はこう変わる

同じ会計事務所でも、応募者の経歴によって志望動機の軸は変わります。自分に近い型を選び、足りない材料を補うと、組み立てが速くなります。

次の表は、経歴別の軸の目安です。

経歴の型軸にする材料補うべき点避けたい書き方
未経験(業界・業務とも)学習の継続、簿記などの取得資格、仕事選びの理由業務の理解、入社後に任せたい作業の具体像「未経験ですが頑張ります」だけで終える
事務所の実務経験者担当業務の範囲、顧問先の規模・業種、再現できる成果転職理由の前向きな言い換え前職の不満を理由の中心に置く
科目合格者・受験生合格科目、学習計画、実務と受験の両立の見通し繁忙期の学習時間の確保方針試験の話だけで実務への関心が見えない
事業会社経理からの転職決算・税務の担当範囲、会計ソフトや業務の知識事業会社との仕事の違いの理解「経理経験があるので即戦力」とだけ書く

未経験者は「理解と準備」を示す

未経験の場合、実務の成果は書けません。その代わり、仕事の理解と準備の量が評価の対象になります。簿記の学習内容、会計ソフトの練習、関連する税法の学習などを具体的に書き、業務への入り口に立っていることを示します。未経験からの転職全般の進め方は未経験から税理士法人への転職は可能?にまとめています。

実務経験者は「再現できる成果」を示す

事務所での実務経験がある人は、担当した範囲を事実で示します。担当した顧問先の種類、申告の種類、後輩への指導経験などです。そのうえで、転職理由は不満ではなく「やりたいことが広がった」という方向で整理します。前職の環境への批判は、書類上も面接でも評価を下げやすい点です。

科目合格者・受験生は「両立の見通し」を示す

税理士試験の科目合格者や受験生は、勉強と仕事の両立について採用側が気にします。合格科目と今後の計画を書くのは良いのですが、試験の話だけに寄ると「資格のために働く人」に見えます。実務への関心と、受験を続ける意思の両方を、同じ分量で書くのが安全です。試験休暇などの制度は事務所ごとに異なるため、確認の軸は会計事務所の試験休暇と資格手当の見方が参考になります。

例文で見る:組み立ての使い方

例文は、4段階をどう文章にするかを見るための見本です。そのまま写すと、他の応募者と似た文面になり、面接でも話がかみ合いません。自分の事実に置き換えて使ってください。

事業会社の経理から転職する場合

たとえば、製造業の経理で月次決算と年次の税務申告の補助を担当してきた人が、会計事務所を志望する場面を考えてみます。

> 現職では製造業の経理として月次決算と法人税申告の資料作成を担当してきました。申告書の一部を作る立場にとどまり、なぜその処理になるのかを顧問先の経営者に説明する機会がないことに、物足りなさを感じるようになりました。複数の業種の決算に携わり、数字の背景まで話せる立場で働きたいと考え、会計事務所を志望しています。>> 貴所が中小の製造業・卸売業の顧問先を多く扱っていると知り、現職で培った原価の把握や在庫の管理の知識を活かせると考えました。入社後はまず月次の記帳確認と決算準備を担当し、顧問先ごとの事情を早く理解することで、担当者として任せていただける範囲を広げたいと考えています。

この例では、理由が具体的な場面(申告書の一部を作る立場にとどまる物足りなさ)から始まっています。事務所との接点も、顧問先の業種と自分の前職の知識という形で結びついています。

未経験から志望する場合

次は、未経験で簿記を学んできた人の場合です。

> 簿記2級を取得し、現在は税理士試験の簿記論の学習を続けています。独学で学ぶなかで、申告という期限のある手続きを通じて、会社や個人の事情に合わせた判断が求められる仕事だと知り、実務に携わりたいと考えるようになりました。>> 貴所は未経験者向けの研修体制を整え、記帳業務から段階的に任せる方針と伺いました。まず記帳の正確さと期限管理を身につけ、1年目の終わりには担当する顧問先の月次確認を一人で進められる状態を目指します。繁忙期にも学習を続けるため、平日の学習時間の確保方法を決めたうえで応募しています。

資格や学習内容は事実の範囲で書き、入社後の目標も「記帳から段階的に」という具体的な形にしています。面接で突っ込まれても答えやすい書き方です。面接での質問への備え方は会計事務所の面接でよく聞かれる質問と答え方で取り上げています。

避けたい表現と、提出前に確認したいこと

志望動機は、避けたい表現を知っておくだけで、半分は整います。最後に、よくある失敗の型と、提出前のチェックリストを示します。

評価を下げやすい表現の型

次のような書き方は、内容があっても読み手に響きにくくなります。

  • 「安定しているから」「資格が活かせるから」だけの理由:どの職場にも当てはまり、会計事務所である必然性が見えません。
  • 「勉強させていただきたい」「教えていただきたい」中心の文面:受け身の姿勢に読まれます。学ぶ意思は、貢献したい内容とセットで書きます。
  • 事務所の特徴を調べずに書いた称賛:「業界の中で定評のある」「幅広い」といった言葉は、調べていない印象を与えます。
  • 前職への不満が中心の転職理由:同じ不満を抱えて辞めるのではないかと見られます。

提出前のチェックリスト

書き終えたら、次の項目を1つずつ確認します。1つでも「いいえ」があれば、その部分から直します。

  1. 会計事務所を選ぶ理由が1つに絞られ、きっかけの場面が書かれているか
  2. 書いた経験や資格は、履歴書・職務経歴書の記載と一致しているか
  3. 応募先の事務所だけに当てはまる接点(業種・業務・体制など)が1つ以上あるか
  4. 入社後に担当したい業務が、具体的な作業名で書かれているか
  5. 繁忙期や資格学習との両立について、事実に基づいた一文があるか
  6. 前職への批判が理由の中心になっていないか
  7. 声に出して読んだとき、面接で同じ内容を自分の言葉で話せるか

書類と面接をそろえる

最後の7番目の項目は、特に大切です。書類の志望動機は、面接での最初の質問の台本になります。書類に書いたことを面接で別の言い方で話すと、内容が違うと受け取られかねません。書類の文面を元に、1分程度で話せる版と、深掘りされたときの根拠(具体例)をメモにしておくと安心です。

まとめ

会計事務所・税理士法人の志望動機は、熱意を表す言葉を足すより、仕事の理解と事実を並べることで強くなります。税理士業務の中身(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を踏まえ、自分の経験とどこで結びつくかを示すのが基本です。

組み立ては、「理由→経験→事務所との接点→入社後」の4段階です。経歴によって軸にする材料は変わりますが、どの型でも、事実を盛らないこと、書類と面接で話をそろえることは共通しています。事務所ごとに顧問先や体制が違うので、接点の部分だけは応募先ごとに必ず書き直してください。

志望動機は一度で完成させるものではありません。書いた文面を面接の質問に当てて読み返し、答えにくい部分があれば材料を補う、という往復で精度が上がります。

  • 採用側は、仕事の理解、続けられるか、事務所との接点の3点を志望動機から見ている
  • 理由は1つに絞り、きっかけの具体的な場面を入れる
  • 経験や資格は事実だけを書き、書類全体の記載と一致させる
  • 事務所ごとの接点(業種・業務・体制)を1つ以上入れ、入社後の担当業務を具体的に書く
  • 提出前に7項目のチェックリストで確認し、書類と面接の話をそろえる

参考文献

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