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会計事務所の試験休暇と資格手当の見方|福利厚生を比べる5つの軸

Photo by Jane JIANG on Unsplash

税理士試験の科目合格を目指しながら働いている人にとって、転職先選びで気になるのは年収だけではないはずです。求人票に「試験休暇あり」「資格手当あり」と書かれていても、何日取れるのか、有給なのか、合格したときにいくら出るのかまでは分かりません。内定後に条件を聞いて、想像と違ったという声も少なくありません。

この2つは、福利厚生の中でも事務所ごとの差が出やすい項目です。しかも、試験休暇も資格手当も、法律で一律に決まっているものではありません。「ある」か「ない」かで比べると、実態を見誤ります。大切なのは、制度の名前ではなく、日数・条件・支給の方法という中身で比べることです。

この記事では、厚生労働省の就労条件総合調査で分かる特別休暇の全体像、国税庁が公表している税理士試験の結果、厚生労働省の職業情報提供サイト job tag の年収を軸に置きます。そのうえで、求人票と面接で何を確認すれば比較できるのかを、表とチェックリストにまとめました。読み終えるころには、2つの制度を自分の受験計画に照らして判断できるようになります。

この記事で分かること

  • 試験休暇が「法定の休み」ではなく事務所ごとの制度である理由と、公的統計での位置づけ
  • 試験休暇を比べるときに見るべき条件(日数・有給か無給か・取得時期・対象試験)
  • 資格手当の支給方法の違いと、月額だけで判断してはいけない理由
  • 年収の公的な基準値と、手当・休暇を合わせて待遇を見る考え方
  • 求人票・面接で使える確認チェックリスト
目次

試験休暇は法律で決まった休みではなく、事務所ごとの制度です

試験休暇は、労働基準法で決められた休暇ではありません。就業規則や雇用契約で定められた事務所独自の「特別休暇」の一種で、あるかどうか、何日か、有給かどうかは事務所が決めます。公的統計でも、特別休暇を持つ企業は全体の6割程度にとどまります。

公的統計で見る特別休暇の普及度

厚生労働省の令和7(2025)年就労条件総合調査の概況によると、夏季休暇、病気休暇などの特別休暇制度がある企業の割合は60.3%です。種類別にみると、夏季休暇が41.5%、病気休暇が28.4%、リフレッシュ休暇が15.4%、ボランティア休暇が7.3%、教育訓練休暇が5.4%、これら以外の1週間以上の長期の休暇が16.7%となっています。複数回答の集計のため、合計は100%になりません。

ここで押さえておきたいのは、この数値が企業全体の集計であり、会計事務所や税理士法人に絞った数字ではないことです。会計事務所だけの試験休暇の導入率は、公的統計では区分されていません。ネット上には「会計事務所の何割が試験休暇を設けている」という数字も見かけますが、出典が人材サービス会社の集計である場合は、そのまま信じず、参考程度にとどめるのが安全です。

「教育訓練休暇」の割合が示すこと

種類別の内訳のうち、資格の学習や受験に最も近いのは教育訓練休暇で、5.4%です。もちろん、試験休暇を「特別休暇」や「夏季休暇」の枠の中で運用している事務所もありますし、資格取得支援制度の一部として設けている事務所もあります。したがって、この5.4%を「試験休暇の導入率」と読み替えることはできません。

それでも、企業全体でみれば、学習や受験のための休暇が広く当たり前に用意されているわけではないことは分かります。会計事務所は資格取得を前提に人を育てる業界なので、一般企業より制度が整っている事務所も多いはずですが、それは事務所ごとに確かめるしかありません。制度があるかどうかを、求職者側が主体的に聞く必要がある項目だと考えてください。

制度名が同じでも中身は別物になる

たとえば、同じ「試験休暇あり」と書かれた2つの求人があるとします。一方は受験する科目数にかかわらず年間3日を有給で、もう一方は試験当日のみ無給で認めるという運用かもしれません。求人票の上ではどちらも「試験休暇あり」の一行で済まされます。

制度の有無で足切りをすると、中身のよい事務所を落とし、形だけの事務所を残してしまうことがあります。次の章で、比べるための軸を具体的に整理します。

試験休暇は「日数・有給か無給か・取得時期・対象」の4点で比べます

試験休暇を比べるときは、制度名ではなく、日数、賃金の扱い、取得できる時期、対象となる試験の4点を確認します。この4点が分かれば、自分の受験計画で使えるかどうかを判断できます。

日数と、試験当日だけか直前の学習期間も含むか

税理士試験は、令和7年度(第75回)が8月5日、6日、7日に実施されました。試験当日は3日間にわたるため、受験する科目の時間割によっては複数日を休む必要があります。試験当日だけを休暇として認める事務所と、直前の学習期間として数日から数週間の休みや勤務の軽減を認める事務所とでは、合格に向けた負担が大きく変わります。

確認するときは「何日」だけでなく、「試験当日のみか、直前の学習日を含むか」「前後の移動日は含まれるか」も聞きます。遠方の会場で受験する場合は、移動日が含まれるかどうかで実質の休める日数が変わるためです。

有給か無給か、年次有給休暇との関係

次に重要なのは、試験休暇を取った日の賃金の扱いです。有給の特別休暇として扱われるのか、無給なのか、あるいは年次有給休暇を使うことが前提になっているのかを確認します。年次有給休暇を充てる運用の場合、名目上は「試験休暇あり」でも、実質は有給休暇の取得を妨げないという意味にすぎないことがあります。

年次有給休暇は、もともと労働者の権利として付与されるものです。試験のために使うこと自体は問題ありませんが、それを試験休暇と呼ぶのであれば、特別休暇として別枠で用意されている事務所とは価値が違います。面接では「試験休暇は年次有給休暇とは別に付与されますか」と聞くと、違いがはっきりします。

取得できる時期と繁忙期との関係

税理士試験の実施時期は8月です。確定申告期(2〜3月)のような業務の山とは時期がずれますが、決算や法人税の申告が集中する月や、担当先の繁忙が重なる月は事務所ごとに違います。試験休暇の制度があっても、実際には「忙しい時期は取りづらい」という空気がある事務所では、制度が機能しません。

繁忙期の働き方については、会計事務所の残業と繁忙期の実態|確定申告期の残業を見分ける方法で詳しく整理しています。試験休暇の取りやすさは、残業や繁忙期の実態とセットで見ると判断を誤りません。

比較表:試験休暇の確認項目

確認項目見るポイント確認方法
日数試験当日のみか、前後や直前の学習日を含むか求人票・就業規則・面接
賃金の扱い有給の特別休暇か、無給か、年次有給休暇を充てるか面接・就業規則
対象試験税理士試験のみか、簿記・社労士・FPなども含むか面接
取得の条件受験料の領収書や受験票の提出、事前申請の期限就業規則
回数の上限年間の回数や、不合格後の再受験の扱い面接
取得実績直近で実際に取得した人がいるか面接(現場の人に聞く)

資格手当は「金額」より「支給のしくみ」で見ます

資格手当は、月額の金額だけを見て比べると誤ります。毎月払われるのか合格時の一時金なのか、基本給に含まれていないか、科目合格でも出るのかといった支給のしくみで、年間に受け取れる実額が大きく変わります。

月額手当か、合格時の一時金か

資格手当には、大きく分けて、資格を持っている間は毎月支給される月額手当と、合格した際に一度だけ支給される一時金があります。事務所によっては両方を組み合わせています。

月額手当は、長く勤めるほど積み上がり、昇給や賞与の算定基礎に反映される場合もあります。一時金は、受験や学習にかかった費用を補う性格が強く、合格という節目に出る分だけ、モチベーションの面でも意味を持ちます。どちらが優れているということではなく、自分がこれから何年その事務所で働くつもりか、資格を取るまでの期間はどれくらいか、によって有利不利が変わります。

科目合格の扱いと、学習費用への支援

税理士試験は、科目ごとに合格を積み上げる仕組みです。国税庁が公表した令和7年度(第75回)の結果は、受験者数36,320人、5科目合格者527人、一部科目合格者7,320人で、合格者数は合計7,847人、合格率は21.6%でした。

この合格者数には、5科目を満たした人と、一部の科目だけに合格した人の両方が含まれます。つまり、多くの受験生が、働きながら科目合格を積み上げていく途中にいることになります。そのため、資格手当が「税理士資格の登録後に限る」のか、「科目合格でも支給される」のかは、受験生にとって重要な違いです。

あわせて、受験料、予備校の受講料、教材費への補助が別にあるかも確認します。資格手当の月額が小さくても、学習費用の補助が手厚い事務所は、受験期間中のトータルの負担が軽くなります。

「手当の一部が固定残業代に含まれていないか」を見る

求人票の月給に、固定残業代や各種手当が含まれていることがあります。資格手当が月給の内訳として示されている場合、その手当が固定残業代の一部として扱われていないか、残業がなくても支払われる条件かを確認します。

求人票の月給を比べるときは、基本給、資格手当、固定残業代を分けて見ます。総額が同じでも、基本給が低いと賞与や退職金の算定額にも影響するためです。手当の名前が並んでいるだけの求人は、内訳の説明を求めても問題ありません。

比較表:資格手当の確認項目

確認項目見るポイント注意したい例
支給形態月額か、合格時の一時金か、両方か一時金のみで月額がない
対象資格税理士、簿記、社労士、その他の資格業務と関係の薄い資格は対象外
科目合格の扱い科目合格でも手当が出るか5科目合格・登録後のみ
基本給との関係手当が基本給に含まれていないか総額のうち手当の比率が高い
賞与・昇給への反映手当が算定基礎に入るか手当は賞与の対象外
学習費用の補助受験料・講座費用の補助があるか補助は受験1回のみ

なお、資格手当の金額の相場は、公的統計では区分されていません。そのため、この記事では金額の目安を示しません。民間の求人媒体などが示す平均額は、その事務所の規模や職種の構成によって大きく変わるため、1つの数字で判断せず、応募先ごとに確認してください。

年収の公的な基準値と合わせて、待遇を全体で見ます

試験休暇や資格手当は、年収という全体像の中で評価するものです。公的な基準として、job tag に掲載されている税理士の全国平均年収は810.8万円で、令和7年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成された数値です。

基準値の使い方と限界

job tag の税理士のページには、全国平均年収が810.8万円と示されています。これは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の結果をもとに、職業情報提供サイトが加工した数値です。

この数値は、税理士という職業の全国平均であって、個別の事務所の水準を示すものではありません。また、資格手当の有無、試験休暇の有無、事務所の規模ごとの細かな違いを示す区分は、公的統計では設けられていません。そのため、ここから「自分がこの事務所に入ったらいくらになる」と読むことはできません。

この基準値の役割は、求人票の年収を見たときに「平均と比べて高いのか低いのか」という目安を持つことです。未経験や科目合格者、有資格者では、平均との位置づけが大きく違います。自分の立場を踏まえて読んでください。

手当と休暇を年収に換算して比べる

年収の比較では、額面の年収だけでなく、休暇や学習支援をどう評価するかが問題になります。試験休暇が手厚い事務所は、受験のための年次有給休暇を消費せずに済みます。学習費用の補助がある事務所は、自己負担の受験料や講座費用が減ります。

たとえば、年収がわずかに低くても、試験休暇が有給で用意され、学習費用の補助も出る事務所と、年収が高くてもそれらが一切ない事務所とでは、受験期間中の実質的な負担が違ってきます。年収の差を埋める要素として、休暇や補助を加味して考えます。

年収アップそのものを目的とする転職の進め方は、税理士の転職で年収アップを成功させるためのポイントと注意点でも扱っています。この記事は、その年収の見方に、休暇と手当という視点を足すものと考えてください。

一般企業の経理との比較でも同じ軸を使う

会計事務所と一般企業の経理とでは、休暇制度の設計が異なります。一般企業では、大企業ほど制度が整っていることが多く、一方で、資格取得を前提とした支援は事務所ほど手厚くない場合もあります。どちらが有利かは一概には言えません。

この記事で整理した4点(日数、賃金の扱い、時期、対象)と、手当の支給のしくみを、一般企業の求人にも同じように当てはめて比べてください。

求人票と面接で確認する手順とチェックリスト

確認は、求人票で文言を拾い、面接で運用を聞き、内定後に書面で確かめる、という3段階で行います。制度の「文言」と「運用」は別物なので、現場の実態まで聞くことが大切です。

段階ごとの確認手順

求人票の段階では、「試験休暇」「資格手当」「受験料補助」などの言葉の有無を確認します。ここでは、あるかないかを見るだけにとどめ、応募の可否を決めすぎないでください。

面接の段階では、制度の運用を具体的に聞きます。たとえば、科目合格を目指して入所2年目の人が、8月の試験に向けて直前の1週間を休めるのか、その場合の賃金はどうなるのか、といった自分のケースに引き寄せた質問にします。「過去1年で実際に取得した人はいますか」と聞くと、制度が機能しているかが分かります。

内定後の段階では、労働条件通知書や就業規則で、口頭で聞いた内容が書面になっているかを確かめます。口頭の説明だけで判断せず、書面で残っていることを確認してください。

チェックリスト

  • 試験休暇の日数と、試験当日のみか直前の学習日も含むかを確認した
  • 試験休暇が有給か無給か、年次有給休暇とは別枠かを確認した
  • 対象となる試験(税理士試験のほか簿記・社労士などを含むか)を確認した
  • 取得の申請方法と、提出が必要な書類(受験票など)を確認した
  • 直近で実際に試験休暇を取得した人がいるかを聞いた
  • 資格手当が月額か一時金か、両方かを確認した
  • 科目合格でも手当が出るか、登録後のみかを確認した
  • 手当が基本給や固定残業代と別に記載されているかを確認した
  • 手当が賞与や昇給の算定基礎に入るかを確認した
  • 受験料や講座費用の補助の有無と上限を確認した
  • 口頭の説明が労働条件通知書や就業規則に書かれていることを確認した

聞きにくいときの言い方

試験休暇や資格手当の質問は、「勉強のことばかり気にしている」と思われないか不安になりがちです。しかし、会計事務所は資格取得を前提に人を育てる業界であり、受験を考えている人が制度を尋ねるのは自然なことです。

「資格の学習を続けながら長く働きたいので、どんな支援の制度があるか教えてください」と、長く働く意思とセットで伝えると、伝わりやすくなります。

まとめ

試験休暇は法定の休みではなく、事務所ごとの特別休暇の一種です。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査の概況では、特別休暇制度がある企業は60.3%で、教育訓練休暇は5.4%にとどまります。会計事務所に絞った導入率は公的統計で区分されていないため、制度の有無は応募先ごとに確かめる必要があります。

資格手当も、月額の金額だけでなく、支給形態、科目合格の扱い、基本給や固定残業代との関係、賞与への反映まで見て初めて比べられます。令和7年度の税理士試験では、合格者7,847人のうち5科目合格者は527人で、一部科目合格者は7,320人でした。多くの人が科目合格を積み上げながら働くため、科目合格の段階で支援があるかどうかは実務的な差になります。

年収は、job tag の税理士の全国平均年収810.8万円を基準の目安にしつつ、休暇や手当、学習費用の補助を加味して見ます。求人票で文言を拾い、面接で運用を聞き、書面で確かめるという3段階で確認すれば、入所後の食い違いを減らせます。

  • 試験休暇は法定の休みではなく事務所ごとの制度なので、有無より中身で比べる
  • 試験休暇は「日数」「有給か無給か」「取得時期」「対象試験」の4点で確認する
  • 資格手当は月額か一時金か、科目合格でも出るか、基本給との関係まで見る
  • 年収はjob tagの全国平均を目安にしつつ、休暇と学習支援を加味して判断する
  • 求人票・面接・書面の3段階で確認し、現場の取得実績まで聞く

参考文献

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