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会計事務所の転職に適した時期|繁忙期を踏まえた退職・転職の進め方

Photo by Hillary Black on Unsplash

「次の確定申告を乗り切ってから動くべきか。それとも繁忙期に入る前に辞めるべきか」。会計事務所で働いていると、この問いが年末ごろから頭を離れなくなります。忙しい時期に抜けると同僚に迷惑がかかる、という気持ちもあります。一方で、毎年「落ち着いたら考える」と先送りにして、気づけば数年たっていたという人も少なくありません。

転職の時期選びが難しいのは、動き始める時期と、実際に退職する時期が別の問題だからです。会計事務所には、確定申告、年末調整、決算など、業務が集中する山が年に何度もあります。税理士試験を受けている人は、試験日程も判断に入ってきます。

この記事では、会計事務所の1年の流れを日付の分かる一次情報で整理し、「いつ活動を始めるか」「いつ退職を伝えるか」「いつ入社するか」を分けて考えるための手順を示します。読み終えるころには、自分の事情に合った時期の候補を、根拠を持って2〜3個に絞れるようになります。

この記事で分かること

  • 会計事務所の1年のうち、業務が集中する時期と比較的動きやすい時期
  • 転職活動の開始時期と退職時期を分けて考える方法
  • 退職の申し出に関する法的なルールと、就業規則の確認ポイント
  • 税理士試験の受験生が時期を決めるときの考え方
  • 自分の状況から転職時期を逆算するためのチェックリスト
目次

転職時期は「活動の開始」「退職の申し出」「入社日」の3つに分けて決める

結論から言うと、会計事務所の転職に唯一の正解の時期はありません。「活動を始める時期」「退職を伝える時期」「次の職場に入る時期」を別々に決めると、繁忙期との衝突を減らせます。

多くの人は「転職の時期」を1つの日付のように考えます。しかし実際には、情報収集と応募の期間が1〜数か月、内定後の退職交渉と引き継ぎが1〜2か月、そのあとに入社日が来ます。この3つは必ずしも同じ月にそろいません。たとえば、繁忙期のさなかに情報収集だけ進めておき、申告期が終わった直後に退職を申し出て、次の職場には夏に入る、という組み方もできます。

時期を決めるうえで先に押さえたいのは、今の職場と次の職場それぞれの業務の山です。今の職場の山を避けて退職すれば、引き継ぎが円滑になり、円満退職に近づきます。次の職場の山の直前に入社すると、研修の時間が取れないまま繁忙期に入るおそれがあります。入社時期の希望は、内定後に確認できる事項ですが、応募の段階で「入社可能時期」を聞かれることが多いので、先に自分の考えを持っておくと選考が進めやすくなります。

もう一つ大切なのは、ここで示す時期の目安が「業務のカレンダー」に基づくものだという点です。求人の出方や採用のタイミングは、事務所の規模や方針で大きく異なります。時期だけで有利不利を決めつけず、気になる事務所には採用予定を直接確認するのが確実です。

3つの時期を分けるメリット

3つを分けると、「繁忙期だから動けない」という思い込みが外れます。情報収集や職務経歴書の準備は、繁忙期のすき間時間でも進められます。退職の申し出だけを繁忙期の外に置けば、周囲への影響も抑えられます。

反対に、まとめて1つの日付で考えると、「4月に入社したいから1月に退職を伝える」という逆算が、そのまま確定申告の最中にぶつかります。3つに分けるだけで、こうした衝突は見えやすくなります。

会計事務所の1年は、業務の山を日付で押さえると見える

会計事務所の主な山は、確定申告の時期、源泉所得税の納期の前後、年末調整の時期です。決算や法人の申告も月ごとに分散して発生します。まず公的な日付を確認しましょう。

国税庁のタックスアンサーによると、所得税の確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までです。申告と納付の期限も、原則として翌年3月15日とされています。個人の顧客が多い事務所では、この前後の数週間に業務が集中しやすくなります。

源泉所得税については、納期の特例の適用を受けている場合、1月から6月までに源泉徴収した所得税等は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した分は翌年1月20日が納付期限と、国税庁が案内しています。顧問先の給与計算や納付を代行している事務所では、この日付の前後にも作業が発生します。

年末調整は、国税庁の説明では、毎月の給与から源泉徴収した所得税等の合計額と、その年に実際に納めるべき税額との差額を精算する手続きです。1年を通じて勤務している人などは12月に行うとされており、10月から12月は顧問先から集めた書類の処理が重なる時期にあたります。

1年のカレンダーと動きやすさの目安

次の表は、上記の公的な日付を軸に、一般的な業務の流れをまとめたものです。法人顧問先の決算月、個人顧問先の割合、年末調整を受託しているかどうかで、事務所ごとに山の位置は変わります。表は目安として使い、自分の事務所の実情に当てはめてください。

時期主な業務の動き退職を申し出るときの考え方
1〜3月中旬年末調整後の法定書類の処理、確定申告(原則2月16日〜3月15日)最も抜けにくい時期。活動の準備だけ進める
3月下旬〜5月申告後の整理、法人の決算・申告申し出の候補。個人の山を越えた後で引き継ぎしやすい
6〜7月源泉所得税の納期(7月10日)前後山は比較的小さい。申し出の候補
8〜9月税理士試験の時期(令和8年度は8月4日〜6日)受験生は休暇や学習時間の確保を優先
10〜12月年末調整の書類処理年末調整を担当している場合は引き継ぎに注意

この表の「考え方」の列は、公的な統計に基づくものではなく、業務カレンダーからの整理です。実際の山の高さは事務所で違うため、同僚や上司の話、過去の繁忙の様子と合わせて判断してください。

確定申告期の働き方そのものを具体的に知りたい場合は、会計事務所の残業と繁忙期の実態|確定申告期の残業を見分ける方法も参考になります。

時期別に考える:申告後・夏・年末前のそれぞれの特徴

退職を申し出る時期の候補は、大きく分けて3つです。申告期が終わった春、業務が落ち着きやすい夏、年末調整の前後です。それぞれ、引き継ぎのしやすさと入社後の動きやすさが違います。

確定申告後(3月下旬〜5月)に動く場合

最も多くの人が検討するのが、確定申告を終えた直後です。個人の申告が完了していれば、担当顧客の引き継ぎ資料を作りやすく、上司にも「この時期ならお願いできます」と伝えやすくなります。

注意したいのは、3月から5月に決算を迎える法人の申告が続く場合です。担当先に法人が多い人は、申告期限と退職日の関係を事前に確認しておきます。また、転職先の側も同じ時期に採用活動をしていることが多いため、応募から入社日までの期間が長引かないよう、スケジュールの希望を早めに伝えるとよいでしょう。

夏(6〜8月)に動く場合

夏は、源泉所得税の納期の特例の期限(7月10日)を過ぎると、事務所の作業が比較的落ち着く傾向があると感じる人が多い時期です。ただし、これは事務所による差が大きく、決算期が集中する顧問先を持つ事務所では違うこともあります。

税理士試験の受験生は、試験直前の8月に転職の面接や入社が重ならないよう注意が必要です。令和8年度の試験は、国税庁の公告によると8月4日(火)から6日(木)の3日間でした。例年この時期に実施されるため、学習計画と転職の予定を、試験の数か月前から調整しておきます。

年末前後(10〜12月)に動く場合

年末調整の書類が顧問先から集まる時期は、事務所の側も忙しい時期です。担当している顧問先の年末調整を途中で他の人に渡すと、確認漏れが起きやすくなります。このため、10月から12月に退職を申し出る場合は、年末調整を担当している範囲を明確に区切って引き継ぐ手順を、事前に上司と相談しておくと安心です。

一方で、年明けに入社して、そのまま確定申告期に入るという流れは負担が大きくなります。入社を1月に設定する場合は、研修や担当顧客の割り当てがどう進むのかを、内定前に確認しておきましょう。

こうした時期ごとの状況を踏まえ、入社直後の働き方を事前に確認する方法は、税理士法人への転職で後悔しないための確認事項|入社前に見るべき7項目で具体的に整理しています。

退職の申し出は「2週間」だけで決めず、就業規則と引き継ぎ期間から逆算する

法律上の最短の退職時期と、実際に円満に辞められる時期は別物です。まず民法の原則を確認し、そのうえで就業規則と引き継ぎにかかる期間を足して、申し出の時期を逆算します。

厚生労働省の鹿児島労働局のQ&Aでは、期間の定めのない雇用契約の場合、民法第627条により、解約の申入れから2週間で契約が終了すると説明されています。会社の同意がなければ退職できない、というものではない旨も示されています。

一方、同じQ&Aは、就業規則に退職に関する定めがあれば、原則としてその規定が適用されるため確認するよう案内しています。そのうえで、就業規則が極端に長い申入れ期間を定めている場合は、退職の自由を極度に制限するものとして、公序良俗の観点から無効とされることもあると説明しています。つまり、1か月前や2か月前の申し出を求める規定が実際にあるかどうかを先に確認し、その範囲で現実的な日程を組むのが基本です。

契約期間が決まっている雇用の場合は、上記の説明とは別の扱いになります。このQ&Aには期間の定めがある場合の記載がないため、雇用契約書の内容を確認し、不明な点は労働局などの公的な窓口に相談してください。

申し出の時期を逆算するチェックリスト

退職日を起点に、次の項目を順に確認すると、無理のないスケジュールが組めます。

  1. 就業規則の退職に関する条項(申し出の期限、書式、提出先)を確認した
  2. 雇用契約書で契約期間の定めの有無を確認した
  3. 担当顧問先の申告期限・納期(確定申告、決算、源泉所得税の納期の特例など)を一覧にした
  4. 退職日までに完了させたい業務と、引き継ぐ業務を分けた
  5. 引き継ぎ資料(顧問先ごとの注意点、スケジュール、連絡先)の作成に必要な日数を見積もった
  6. 有給休暇の残日数と、消化する希望を整理した
  7. 次の職場の入社可能日の目安を、内定が出る前に自分の中で決めた

特に3と5が大切です。顧問先の件数が多い人ほど、引き継ぎ資料の作成に時間がかかります。担当件数が多いのに申し出から退職までの期間が短いと、トラブルになりやすいので、余裕のある日程を組みましょう。

申し出の伝え方

退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝え、そのあとで書面(退職届など)を提出する流れが一般的です。いきなり書面だけを出すより、先に相談の形で伝えるほうが、引き継ぎの調整をしてもらいやすくなります。繁忙期の直前に伝える場合は、「繁忙期の担当を最後まで務める」という姿勢を示すと、受け入れられやすくなります。

税理士試験を受けている人は、試験日程と合格発表を軸にする

科目合格を目指して働いている人は、転職時期を試験日程から決めるのが現実的です。試験直前に環境を変えると学習時間が崩れやすく、合格発表の前後は次の動きを決めやすくなります。

国税庁の公告によると、令和8年度(第76回)税理士試験は、令和8年8月4日(火)、5日(水)、6日(木)の3日間で実施されました。合格発表は令和8年11月27日(金)と記載されています。今日の時点では、この合格発表がまだ先にある人もいるでしょう。結果を待ってから転職の方針を決めたい人にとって、11月下旬は1つの区切りになります。

ただし、次の試験は例年8月ごろに行われるため、合格発表のあとに転職すると、翌年の試験まで約8か月ほどしかありません。この間に新しい職場に慣れつつ学習を続けることになります。入社後に学習時間をどう確保するかを、時期の選択と合わせて考える必要があります。

受験生が転職前に確認したいこと

試験前の1〜2か月に、試験休暇や勤務時間の調整が可能かどうかは、転職先ごとに違います。入社した直後は、有給休暇の付与条件を満たしていないケースもあります。こうした条件は、内定後ではなく選考中に確認しておきましょう。試験休暇や資格手当の見方は、会計事務所の試験休暇と資格手当の見方|福利厚生を比べる5つの軸で整理しています。

たとえば、8月の試験が近い時期に入社日が決まってしまうと、研修と試験前の追い込みが重なります。反対に、試験が終わった直後の8月下旬から9月に入社すれば、次の学習計画を立てる余裕を持って仕事に入れます。試験の結果が出る前でも転職活動は進められるため、「合格発表を待つ」と「活動を始める」は切り分けて考えてかまいません。

時期の候補を決める手順:3つの質問で絞り込む

最後に、ここまでの内容を使い、自分に合う時期を絞る手順をまとめます。次の3つの質問に順に答えると、候補が2〜3個に絞れます。

最初の質問は、今の職場でいつ退職を申し出れば、担当業務を無理なく引き継げるか、です。顧問先の申告期限と就業規則の申し出期限を並べ、引き継ぎに必要な日数を足して、最も早い現実的な退職日を出します。

次の質問は、次の職場にいつ入社するのが、自分にとって負担が少ないか、です。繁忙期の直前に入社して研修が足りなくなるのか、繁忙期を過ぎて余裕を持てるのかを、応募先の事務所の業務の流れと合わせて確認します。税理士試験を受験中の人は、試験日程との重なりも見ます。

最後の質問は、活動の開始はいつにするか、です。退職日から逆算し、情報収集と応募の期間として最低でも1〜3か月ほど見ておくと安心です。この期間は個人差があるため、一つの目安として扱ってください。

時期を決めるときの判断基準

状況優先して考えること時期の考え方の例
担当顧問先が多く、引き継ぎに時間がかかる申し出から退職までの期間を長く取る繁忙期の前に申し出、山を越えた直後に退職
税理士試験を受験中試験日程と学習時間の確保試験直前の入社を避け、試験後または合格発表後に入社
年末調整の担当を持っている年末調整の区切りを明確にする年末調整の完了後、または担当範囲を引き継いだ後に退職
就業規則に長い申し出期間がある規定を確認し、範囲内で調整規定の期間に余裕を足して申し出る

この表は、状況ごとの考え方を整理した例であり、特定の時期を勧めるものではありません。自分の事情に近い行を参考に、日程を組んでください。

面接の準備や逆質問で、入社後の繁忙期の働き方を確かめたい場合は、税理士・会計事務所の面接で使える逆質問が役に立ちます。

まとめ

会計事務所の転職時期は、確定申告の期間、源泉所得税の納期、年末調整といった業務の山と、自分の事情を重ねて決めます。そのとき、活動の開始、退職の申し出、入社日の3つを別々に考えると、繁忙期とぶつかる場面を減らせます。

退職の申し出は、民法上の2週間という最短の目安だけで決めず、就業規則の規定と引き継ぎにかかる日数から逆算します。税理士試験を受けている人は、試験日程と合格発表を軸にして、入社後の学習時間まで含めて考えると、時期の選択がぶれにくくなります。

時期の目安はあくまで業務カレンダーに基づく整理であり、事務所ごとの違いは大きいものです。気になる事務所には、採用の予定や入社後の研修の流れを直接確認し、納得できる時期を選んでください。

  • 転職の時期は、活動の開始・退職の申し出・入社日の3つに分けて決める
  • 確定申告は原則2月16日から3月15日、源泉所得税の納期の特例は7月10日と翌年1月20日が目安になる
  • 退職は期間の定めのない雇用なら申入れから2週間が原則だが、就業規則と引き継ぎ期間も確認する
  • 税理士試験の受験生は、試験日程(令和8年度は8月4日〜6日)と合格発表(11月27日)を軸に時期を決める
  • 応募先の採用予定や入社後の繁忙期の働き方は、選考中に直接確認する

参考文献

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